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中国の七宝について説明しています。
七宝は紀元前のエジプトを起源とする説が有力な、金属を素地に用いる焼物であり、金属工芸の分野における伝統工芸技法です。
主に用いられる金属素地は金、銀、銅、青銅、鉄などで、粘土や灰などを水に懸濁させた釉薬(ゆうやく)をかけ、800℃前後の高温で焼成する独自の技法は、中近東で生まれたと言われています。
その後シルクロードを通って中国に伝わり、その後日本にも伝わったとされ、ガラス様もしくはエナメル様の独特の美しい彩色は、時代を越えて人々を魅了し続けています。
中国の七宝は古くからの歴史を有しており、各時代それぞれの作品に異なる特徴が見られます。
中国大陸では琺瑯(ほうろう)と呼ばれる七宝は、元の時代(1271~1368)より製造が盛んとなり、日本に七宝が伝えられたのも同時期とされています。
続いて明の時代すなわち景泰年間(1450~1457)の作品の掐糸琺瑯は歴史的にも非常に評価が高く、中国の七宝を景泰藍絶妙と称される理由と伝えられています。
ちなみに景泰藍はその名の通り、特に青色(藍色)が好まれ、青銅と日本の泥七宝に通じる不透明な釉薬が用いられています。また青銅から釉薬が崩れ落ちるのを防ぐべく、細かい植銭を全体に張り巡らせる技法も特徴的です。
やがて康煕・雍正・乾隆の三朝の清代になると、とりわけ画琺瑯が発展する一方、康煕時代にはヨーロッパの影響を色濃く感じさせる琺瑯器も制作されています。
その後乾隆時代になると、各種の技法の融合が始まり、中国と西洋それぞれの装飾文様が混在する、同時代に作られた琺瑯器も確認されています。
中国の七宝(琺瑯)の技法は、以下の3つに大別できます。
まずは「内填琺瑯(ないてんほうろう)」。これは彫刻を施した金属製の土台にエナメルを施すシャンルヴェ、あるいは日本の七宝の技法のひとつである象嵌七宝に相当します。
次に金属板の上に細い金属線でモチーフの輪郭を描き、そこにエナメルを流し込む技法のクロワゾネや象嵌七宝に相当する「掐糸琺瑯(こうしほうろう)」。そして3つ目がペイントエナメル(描画七宝)に相当する「画琺瑯(がほうろう)」です。
象嵌(ぞうがん)とは書いて字のごとく、「象(かたど)って」「嵌(は)める」という意味をもち、鉄などの素材に縦横の細かく溝を彫ってそこに菌や銀を打ち込んだ七宝を指します。
日本国内では京都に京象嵌が同じ製法で作られており、きらきらと光り輝く金銀装飾の美しさは中国や日本のみならず世界中の人々に愛され続けています。
古来、刀の鍔や甲冑などの武具に施され持ち主の格式の高さを表した象嵌七宝は、現代でも名刺入れや箸置き、ペン立てなど様々な用具の装飾に使われています。
有線七宝は、地金の上に金属線で輪郭を付け、そこの境として釉(うわぐすり)を焼き付けた七宝を指します。
輪郭付けには真鍮や銀などの細い金属線を用いて、本体を焼き終わった後も金属線を取り外さず残しておくことが特徴的です。
何度も釉を重ね塗り、焼成後は表面を金砂で丁寧に磨き上げることで、深みのある上品な光沢が生まれます。
本体の焼成後も金属線を取り除かない有線七宝に対して、焼成前に金属線を取り除いたもの、あるいは最初から金属線を使わずに模様を付けたものを無線七宝と呼びます。
金属線を用いない有線七宝の場合は、筆を使ってガラス釉を絵の具のように本体表面に塗り付け流ことで模様を施します。
金属線を残さないことで焼成時に釉の境界がぼやけて混ざり合うことで、優しい色合いに焼き上がるのが特徴です。
陶磁器の表面にツヤを持たせる釉に金箔や銀箔を施すことで、焼成後の表面に独特の光沢を与える製法を箔七宝と呼びます。
金属線で施した模様とは雰囲気の違う仕上がりになり、使用する箔の透明度や色によっても異なる印象を与えることができます。
模様を施す上で金属線や箔、釉を用いる他の製法と異なり、地金の一部を透かし彫りにすることで模様をつけた七宝を透胎七宝と呼びます。
透かし彫りにした部分と通常の七宝を施した部分がコントラストになり、透かし彫り部分からは光が差し込むためステンドグラスのような輝きを放ちます。
そのデザイン性の高さから、器としてだけではなく指輪やピアスなどのアクセサリー類としても好まれる製法です。
透胎七宝と同様にステンドグラスのような仕上がりになる製法に、省胎七宝があります。
省胎七宝とは、「胎(土台の意味、ここでは素地となる金属を指す)」を「省く」という意味の通り、通常の有線七宝で模様をつけて焼成した後に、酸などの薬品を用いて素地となる銅を溶かします。
素地が溶け去った部分が光を透過するため、ガラス細工のような美しい仕上がりになります。
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