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鼻煙壷(びえんこ)についてご存知でしょうか。これは嗅ぎ煙草入れのことで、中国では上流階級で大流行しました。特徴や歴史、魅力についてご紹介していきます。鼻煙壷について詳しく知りたい方は、ぜひとも参考にしてみてください。
鼻煙壷とは、漢字を見てもわかる通り、鼻で煙を楽しむためのツボです。嗅ぎ煙草を入れておくための容器、または喫煙具のことを指します。物によって多少違いはあるものの、大きくても高さ約10センチ程度です。
小さな容器ということもあり、多数集めて楽しんでいるコレクターの方も多いようです。素材についても金、銀、陶器、玉、ガラス、瑪瑙、象牙などといった様々な種類があり、美術品としても愛用されています。
主に中国で清の時代に流行したのですが、現在は実際に嗅ぎ煙草を入れる目的で使うというよりも、どちらかというとコレクション的な意味合いで集めている方が多いようです。かなり装飾が美しいものなどもあるので、集めてみるのも楽しいのではないでしょうか。
中国の明の時代となる1368~1644年にイタリアから中国に伝わった芸術品です。中国で大流行した背景には、嗅ぎ煙草に百病を鎮める働きがあると言われたことが関係しています。
嗅ぎ煙草と聞いても、日本ではなかなかピンと来ませんよね。これは、一般的な手持ちタバコとは違い、タバコの粉を鼻の内側にある粘膜部分に付着させてニコチンを摂取する嗜好品です。
アメリカ大陸からヨーロッパに伝わったとされるこの文化は急速に人気を高め、スペインでも1641年には嗅ぎ煙草の工場が作られるまでとなっています。
ヨーロッパでは鼻煙箱と呼ばれるものに入れられていた嗅ぎ煙草ではありますが、中国に入ってくると、本題である鼻煙壺に入れるようになりました。これは、欧州よりも湿気の多い中国で嗅ぎ煙草を湿気から守るための対策の一つでもあります。
実用目的だった鼻煙壷は、清朝に入ると芸術性を競うグッズへと進化。北京の宮廷内に鼻煙壷専門の工房が置かれるなど、国を代表する芸術の一ジャンルとして広く注目され始めました。なお、その専用工房で作られた芸術性の高い鼻煙壷は、他の一般的な工房で作られる雑多な鼻煙壷と区別されて「官僚鼻煙壷」と呼ばれました。
流行するにつれ、徐々に芸術性が高められ、現在残っているような素晴らしいデザインのものが作られるようになっていったのです。装飾も非常に豊かで、日本でも鼻煙壺が作られていました。
現代でもその価値は高く、物によっては数千万円台で取引をされるようなものもあります。中国の上流階級の中で大流行した鼻煙壷をぜひ手にとってみてはどうでしょうか。
鼻煙壷は、どのようにして作られるのでしょうか、物によって様々な違いはあるものの、一般的には無地のガラス瓶が基本となっています。
この他には水晶、琥珀などが使われることもあるのですが、これらに内画技法と呼ばれる方法で絵画や文字を入れていくことになるのです。
実際に手にとってみるとわかりますが、鼻煙壷は非常に小さな壷なので、これに描いていくのは高度な技術が必要になることがわかるでしょう。専用の筆を差し入れ、内側に円を描いていくのです。
通常の筆はまっすぐなので、内側から壷の周りに繊細な絵を描くには向いていません。そのため、ここで使われる専用の筆は、先端が直角に曲がっている特殊なものです。完成までには数ヶ月かかるものもあり、高い技術力が込められています。
一口に鼻煙壷といってもその見た目は一つひとつ印象が違い、シックな色合いのものや、カラフルで華やかなものまで多数の作品があります。
製法もいろいろと工夫されていて、例えばもともとの下地となっているガラスに他の色のガラスを被せる套料(とうりょう)ガラスと呼ばれるものや、銅にエナメルガラスで絵を描いてから焼き付けて作る琺瑯鼻煙壷(七宝焼き)など。
また、作家のセンスによって描かれているデザインの種類も様々なので、どれをとっても楽しめます。コレクション目的で探している方も、興味を引く作品を探してみましょう。
参考までに、鼻煙壷の作品をいくつかご紹介いたします。
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